従業員に新築祝いを贈る完全ガイド|相場・経費・マナーを解説

従業員に新築祝いを贈る完全ガイド|相場・経費・マナーを解説 祝い事

こんにちは、管理人の胡蝶です

従業員の人生の節目である新築は、会社としても心からお祝いしたい大切な出来事です。

しかし、いざ従業員に新築祝いを贈るとなると、「お祝いの相場はいくらが適切なのだろうか」「現金とプレゼント、どちらが良いのか」「会社の経費として処理できるのか、その際の勘定科目はどうすれば良いのか」など、多くの疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。

特に、福利厚生費として計上できるのか、それとも給与として課税対象になってしまうのかという点は、経理担当者や経営者にとって非常に重要な問題です。

また、お祝いを贈る際のマナー、例えばのしの選び方や書き方、渡すタイミングを間違えてしまうと、せっかくの祝福の気持ちが正しく伝わらない可能性もあります。

従業員との良好な関係を維持し、社内の士気を高めるためにも、適切な対応が求められます。

さらに、従業員からお返しをいただいた場合の対応など、細かな配慮も必要となるでしょう。

これらの複雑な問題を解決し、心からのお祝いをスムーズに実現するためには、事前の知識と準備が不可欠です。

◆このサイトでわかる事◆

  • 従業員に新築祝いを贈る際の適切な相場
  • 現金やプレゼントを贈る場合の具体的なマナー
  • のしの正しい書き方と選び方
  • 新築祝いを経費で処理する際の勘定科目
  • 福利厚生費として認められるための条件
  • お祝いが給与として課税されるケース
  • 従業員へのお返しに対するスマートな対応
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従業員に新築祝いを贈る際の基本マナー

従業員に新築祝いを贈る際の基本マナー

◆この章のポイント◆

  • まず知りたい新築祝いの相場
  • 現金を贈る場合の注意点
  • 喜ばれるプレゼントの選び方
  • 恥をかかないための熨斗(のし)のマナー
  • 従業員からのお返しは必要?

まず知りたい新築祝いの相場

従業員に新築祝いを贈る際に、経営者や担当者が最初に悩むのが金額の相場ではないでしょうか。

金額が低すぎるとお祝いの気持ちが伝わりにくいかもしれませんし、逆に高すぎると従業員に気を遣わせてしまう可能性があります。

適切な金額を設定することは、良好な関係を築く上で非常に重要です。

一般的に、会社から従業員へ贈る新築祝いの相場は、1万円から3万円程度とされています。

ただし、これはあくまで目安であり、会社の規模、従業員の役職や勤続年数、そして地域性などによって変動します。

大切なのは、社内で明確な基準を設けておくことです。

これにより、従業員ごとに金額が異なるといった不公平感をなくし、誰に対しても公平に対応することができます。

関係性で見る相場の違い

新築祝いの金額は、従業員との関係性によって調整するのが一般的です。

例えば、役員や特に功績のあった従業員に対しては、相場よりも少し高めの3万円から5万円、あるいはそれ以上を設定することもあります。

一方で、一般の従業員に対しては1万円から3万円の範囲で設定するのが無難でしょう。

私の経験上、多くの企業では慶弔見舞金規程の中で役職に応じた金額を定めています。

このようにルール化しておくことで、担当者が毎回悩む必要がなくなり、スムーズな事務処理にも繋がります。

会社として一律の金額を決めておくことが、公平性を保つ上で最も重要です。

以下に、関係性別の相場を表にまとめましたので、参考にしてください。

贈る相手金額の相場備考
一般社員10,000円 ~ 30,000円最も一般的な金額。福利厚生の一環として設定されることが多い。
役員・管理職30,000円 ~ 50,000円役職や会社への貢献度を考慮して、一般社員より高めに設定されることがある。
特に親しい従業員10,000円 ~ 30,000円(会社として)個人的に別途贈る場合は、公私混同を避けるため分けて考える。

この表はあくまで一例です。

重要なのは、自社の経営状況や社風に合わせて、従業員が納得できる基準を設けることです。

福利厚生の一環として贈る場合は、全従業員に対して公平であることが大前提となります。

特定の従業員だけを優遇するようなことは避けなければなりません。

相場を参考にしつつも、自社の基準をしっかりと確立させましょう。

現金を贈る場合の注意点

新築祝いとして現金を贈ることは、従業員が自由に使えるため、非常に喜ばれる選択肢の一つです。

新しい生活を始めるにあたっては何かと物入りですから、実用的な贈り物は歓迎されるでしょう。

しかし、現金を贈る際には、いくつかのマナーと注意点があります。

これらを知らずに贈ってしまうと、失礼にあたる可能性もあるため、しっかりと確認しておきましょう。

まず、最も基本的なマナーとして、お祝いに包むお札は新札を用意することです。

新札を用意するのは、「この日のために準備していました」という心遣いを示す意味があります。

銀行や郵便局の窓口で両替してもらえますので、事前に準備しておくことをお勧めします。

もし、どうしても新札が用意できない場合は、なるべく綺麗で折り目の少ないお札を選びましょう。

ご祝儀袋の選び方と渡し方

現金をそのまま手渡しするのはマナー違反です。

必ず、ご祝儀袋に入れて渡してください。

新築祝いに使うご祝儀袋は、「紅白の蝶結び」の水引がついたものを選びます。

蝶結びは、何度でも結び直せることから、「何度あっても嬉しいお祝い事」に使われます。

結婚祝いなどで使われる「結び切り」の水引は、一度きりのお祝い事に使うものなので、間違えないように注意が必要です。

ご祝儀袋の表書きは、濃い黒の毛筆や筆ペンで書くのが正式です。

上段中央に「祝御新築」や「御新築御祝」、「御祝」などと書きます。

そして、水引を挟んで下段中央に、会社名と代表者名をフルネームで記入します。

従業員が複数いる会社の場合は、「株式会社〇〇 代表取締役 〇〇〇〇」のように、誰からのお祝いか分かるように明記することが大切です。

現金を渡すタイミングも重要です。

新居の完成後、引っ越しが落ち着いた頃合いを見計らって渡すのが良いでしょう。

一般的には、新居完成から半月~2ヶ月以内が目安とされています。

直接会って渡すのが最も丁寧ですが、難しい場合は現金書留で送ることも可能です。

その際は、お祝いのメッセージを添えると、より一層気持ちが伝わるでしょう。

喜ばれるプレゼントの選び方

現金も実用的で良いですが、形に残るプレゼントを贈りたいと考える場合もあるでしょう。

プレゼントは、従業員の好みやライフスタイルを考慮して選ぶと、より喜ばれます。

ただし、こちらもいくつか注意すべき点があります。

新築祝いのプレゼント選びで失敗しないためのポイントと、おすすめの品、避けるべき品について解説します。

まず、プレゼント選びで大切なのは、相手の負担にならないものを選ぶことです。

大きすぎて置き場所に困るものや、趣味に合わないデザインのものは、かえって相手を困らせてしまうかもしれません。

そうしたミスマッチを防ぐために、カタログギフトや商品券は非常に人気があります。

これらであれば、従業員自身が好きなもの、必要なものを選べるため、失敗がありません。

新築祝いにおすすめのプレゼント

従業員の好みや家族構成が分からない場合でも、安心して贈れるプレゼントをいくつかご紹介します。

  • カタログギフト: 相手が自由に商品を選べるため、最も無難で人気の選択肢です。
  • 商品券・ギフトカード: デパートやネット通販で使えるものであれば、実用性が高く喜ばれます。
  • 観葉植物: 新しい家に彩りを添えてくれます。「根付く」という意味合いもあり、縁起が良いとされています。ただし、手入れが簡単な種類を選びましょう。
  • 上質なタオルセット: 何枚あっても困らない実用品。自分ではなかなか買わないような、少し高級なブランドのものがおすすめです。
  • 小型のキッチン家電: コーヒーメーカーや電気ケトルなど、おしゃれで実用的な家電も人気です。ただし、すでに持っている可能性もあるため、事前に確認できるとより良いでしょう。

避けるべきプレゼント

一方で、新築祝いにはふさわしくないとされる品物もあります。

これらは「火」や「家の損壊」を連想させるため、縁起が悪いとされています。

知らずに贈ってしまうと、相手に不快な思いをさせてしまう可能性があるので注意が必要です。

  • 灰皿、ライター、キャンドル、コンロなど: 「火事」を連想させるためNGです。赤い色のプレゼントも、火を連想させるため避けた方が良いという考え方もあります。
  • 壁掛け時計や絵画: 壁に穴を開ける必要があるものは、新築の家を傷つけることになるため、避けるのが無難です。
  • スリッパやマット類: 「踏みつける」という意味合いにつながるため、目上の方へ贈るのは失礼にあたるとされています。

これらのマナーを参考に、従業員への祝福の気持ちが伝わる素敵なプレゼントを選んでください。

恥をかかないための熨斗(のし)のマナー

新築祝いを贈る際、品物や現金と合わせて重要になるのが「熨斗(のし)」です。

のしは、日本の贈答文化における伝統的なマナーであり、これを正しく使うことで、相手への敬意と祝福の気持ちをより正式に伝えることができます。

逆に、のしの選び方や書き方を間違えてしまうと、せっかくのお祝いが台無しになってしまうこともあります。

ここでは、社会人として、また会社として恥をかかないための、のしの基本マナーについて詳しく解説します。

まず、新築祝いに用いる「のし紙」は、水引が「紅白の蝶結び」になっているものを選びましょう。

前述の通り、蝶結びは何度でも結び直せることから、出産や昇進など、将来にわたって何度繰り返しても喜ばしいお祝い事に用いられます。

新築もこれに該当するため、蝶結びの水引が適切です。

一方で、結婚祝いや快気祝いなどで使われる「結び切り」や「あわじ結び」は、「一度きりであるべきこと」を意味するため、新築祝いには使用しません。

この違いは基本的なマナーとして、必ず覚えておきましょう。

のし紙の表書きと名入れのルール

のし紙を選んだら、次は表書きと名入れです。

これらは毛筆や筆ペンを使い、楷書で丁寧に書くのが基本です。

ボールペンや万年筆で書くのはマナー違反とされていますので注意してください。

【表書き】

  • 「御新築御祝(ごしんちくおんいわい)」: 最も丁寧で正式な書き方です。
  • 「祝御新築(しゅくごしんちく)」: こちらも一般的に使われる丁寧な表現です。
  • 「御祝(おいわい)」: 新築祝い以外のお祝い事にも使える汎用的な書き方です。

これらのいずれかを、水引の上段中央に、文字のバランスを見ながら書きます。

4文字の表書きは「死文字」を連想させ縁起が悪いとする考え方もありますが、「祝御新築」は一般的に広く使われているため、問題ありません。

【名入れ】

水引の下段中央には、贈り主の名前を書きます。

会社から贈る場合は、個人名ではなく、正式な会社名を記入します。

  • 会社名のみを記載: 「株式会社〇〇」のように中央に書きます。
  • 会社名と代表者名を併記: 中央に代表者名をフルネームで書き、その右側に少し小さめに会社名を書くとバランスが良くなります。「株式会社〇〇 代表取締役 鈴木一郎」
  • 部署や有志一同で贈る場合: 「〇〇部一同」や「〇〇会有志」と書き、必要であれば別紙に全員の氏名を書いて同封します。

名前は表書きよりも少し小さめに書くと、全体のバランスが美しく見えます。

これらのマナーを守ることで、会社としての品格を示し、従業員への真摯なお祝いの気持ちを伝えることができるでしょう。

従業員からのお返しは必要?

会社から従業員に新築祝いを贈った後、気になるのが「お返し(内祝い)」についてです。

従業員の立場からすると、「お祝いをいただいたのだから、お返しをすべきだろうか」と悩むのは自然なことです。

しかし、会社側の立場としては、この点について明確な方針を示し、従業員に余計な気遣いをさせない配慮が求められます。

結論から言うと、会社からの新築祝いが「福利厚生」の一環として贈られる場合、従業員からのお返しは不要とするのが一般的です。

福利厚生は、従業員の生活の安定や福祉の向上のために会社が提供するものです。

そのため、お祝いを受け取った従業員がお返しの品を用意することは、福利厚生の趣旨にそぐわないと考えるのが自然でしょう。

会社としては、お祝いを渡す際に「これは会社からの福利厚生の一環ですので、お返しなどのお気遣いは不要ですよ」と一言添えるのが親切です。

口頭で伝えるだけでなく、慶弔見舞金規程などに「会社からの慶弔見舞金に対する返礼は不要とする」といった一文を明記しておくと、より明確になり、従業員も安心して受け取ることができます。

もしお返しをいただいてしまったら

会社側がお返しは不要と伝えていても、律儀な従業員がお礼の品を持ってくるケースもあるかもしれません。

そのような場合は、無理に断るとかえって相手の気持ちを無下にしてしまいます。

その際は、素直に感謝の気持ちを伝えて受け取るのがスマートな対応です。

「お気遣いいただいてありがとうございます。皆様でいただきますね」といった言葉を添えて、受け取りましょう。

いただいた品物が菓子折りなどであれば、職場で他の従業員と一緒に分けるのが良いでしょう。

そうすることで、お祝いを贈ってくれた従業員の感謝の気持ちが、会社全体に伝わります。

大切なのは、従業員にお返しのことで悩ませたり、負担をかけさせたりしないことです。

会社の方針を明確に伝え、従業員が心からお祝いを喜べる環境を整えることが、結果として良好な労使関係に繋がります。

従業員の感謝の気持ちは、日々の業務への貢献という形で返ってくるものだと考え、物質的なお返しは求めない姿勢を貫くことが望ましいと言えるでしょう。

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従業員に新築祝いを福利厚生費で贈る経理処理

◆この章のポイント◆

  • 経費計上のための勘定科目とは
  • 福利厚生費として処理するメリット
  • 課税対象となるケースの解説
  • 会社として守るべき贈る際のマナー
  • 素敵な従業員に新築祝いを贈る総まとめ

経費計上のための勘定科目とは

従業員に新築祝いを贈った場合、その費用は会社の経費として計上することができます。

しかし、経理処理を行う上で「どの勘定科目を使えば良いのか」という問題に直面します。

適切な勘定科目で処理することは、正確な会計処理はもちろん、税務上の観点からも非常に重要です。

従業員への新築祝いに関する費用は、主に「福利厚生費」または「接待交際費」のいずれかの勘定科目で処理するのが一般的です。

どちらの勘定科目を選択するかは、その支出の性質や会社の規定によって決まります。

福利厚生費として計上する場合

「福利厚生費」とは、役員や従業員の労働意欲の向上や福利厚生を目的として、給与や交際費以外に支出する費用のことです。

従業員への新築祝いをこの勘定科目で処理するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

最も重要なのは、全従業員を対象とした公平な基準に基づいていることです。

具体的には、「慶弔見舞金規程」のような社内規程を設け、その規程に従って支給される必要があります。

また、支給される金額が社会通念上、常識的な範囲内であることも求められます。

接待交際費として計上する場合

「接待交際費」とは、得意先や仕入先など、事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用を指します。

もし、社内規程がなく、特定の従業員に対して慣例的に新築祝いを贈っている場合や、金額が社会通念を超えるほど高額である場合は、福利厚生費ではなく接待交際費として扱われる可能性があります。

ただし、資本金1億円以下の中小企業の場合、年間800万円までの交際費は全額損金に算入できる特例があります。

そのため、中小企業においては、どちらの勘定科目で処理しても税務上の影響は同じになるケースが多いです。

勘定科目特徴具体例・条件
福利厚生費全従業員が対象。金額が社会通念上相当。慶弔見舞金規程に基づき、全従業員に一律1万円を支給する。
接待交際費特定の相手への贈答。金額が高額な場合。社内規程はないが、役員Aの新築祝いに10万円を支給した。

どちらで処理するべきか迷った場合は、税理士や会計士などの専門家に相談することをお勧めします。

一般的には、従業員の福祉向上という目的を明確にするためにも、慶弔見舞金規程を整備し、「福利厚生費」として処理できる体制を整えておくことが理想的と言えるでしょう。

福利厚生費として処理するメリット

従業員に新築祝いを贈る際に、その費用を「福利厚生費」として経理処理することには、会社と従業員の双方にとって大きなメリットが存在します。

このメリットを理解することは、適切な社内制度を構築する上で非常に重要です。

なぜ接待交際費ではなく、福利厚生費を目指すべきなのか、その理由を具体的に解説していきます。

最大のメリットは、税務上の取り扱いです。

福利厚生費として認められれば、会社側はその費用を全額損金として算入でき、法人税の節税に繋がります。

そして、従業員側にとっては、受け取ったお祝い金が給与所得とはならず、所得税が課税されない(非課税となる)点が非常に大きな利点です。

もし、これが給与として扱われると、従業員は所得税や住民税、社会保険料の負担が増えてしまいます。

せっかくのお祝いが、かえって従業員の負担を増やす結果になっては本末転倒です。

福利厚生費として認められるための3つの要件

この税務上のメリットを享受するためには、税法で定められた福利厚生費の要件をクリアする必要があります。

ただ会社が「これは福利厚生費だ」と主張するだけでは認められません。

主に、以下の3つの要件を満たすことが求められます。

  • 1. 機会の均等: 全ての役員・従業員に、慶弔見舞金を受け取る機会が平等に与えられている必要があります。役職や勤続年数によって金額に差を設けることは問題ありませんが、特定の従業員だけを対象にすることはできません。
  • 2. 社会通念上の相当性: 支給する金額が、常識的に考えて妥当な範囲内である必要があります。この「社会通念上相当な金額」に明確な上限はありませんが、一般的には1万円から高くても5万円程度が目安とされています。数十万円といった高額な金品は、給与(賞与)とみなされる可能性が高くなります。
  • 3. 社内規程の整備: どのような場合に、誰に、いくら支給するのかを定めた「慶弔見舞金規程」などの社内規程が整備されていることが、客観的な基準を示す上で非常に重要です。

これらの要件を満たし、福利厚生費として適切に処理することで、会社は節税効果を得られ、従業員は手取り額を減らすことなくお祝いを受け取ることができます。

これは、従業員満足度の向上やロイヤリティの強化にも繋がり、ひいては企業の成長に貢献する健全な投資と言えるでしょう。

まだ慶弔見舞金規程がない場合は、この機会に整備を検討することをお勧めします。

課税対象となるケースの解説

従業員への新築祝いが福利厚生費として認められず、「給与」として課税対象になってしまうケースがあります。

そうなると、会社側は源泉徴収の義務が生じ、従業員側は所得税や社会保険料の負担が増えることになり、双方にとって望ましくない結果を招きます。

どのような場合にお祝いが課税対象と判断されてしまうのか、具体的なケースを理解し、意図せぬ課税を避けるための対策を講じることが重要です。

課税対象となるかどうかの最大の分かれ目は、前述した福利厚生費の要件を満たしているかどうかです。

特に「機会の均等」と「社会通念上の相当性」という2つのポイントが厳しく見られます。

これを満たさないと税務署から指摘を受け、給与(賞与)であると認定されるリスクが高まります。

給与認定される主なパターン

以下に、新築祝いが給与として課税されやすい具体的なパターンを挙げます。

  • 社内規程が存在しない: 支給に関する明確なルールがなく、社長の裁量などで特定の従業員にのみ、その都度金額を決めて支給している場合。これは客観的な基準がなく、恣意的な利益供与と見なされやすいです。
  • 金額が社会通念上、高額すぎる: 例えば、一従業員の新築祝いとして30万円の現金や100万円相当の高級家具を贈った場合などです。これはお祝いの範囲を逸脱し、実質的なボーナス(賞与)と判断される可能性が極めて高いです。
  • 対象者が限定的すぎる: 役員やその親族、あるいは社長のお気に入りの従業員だけを対象としており、他の従業員には同様の制度が適用されない場合。これは「機会の均等」の原則に反します。

これらのケースに共通するのは、「全ての従業員に対する公平性」と「社会常識の範囲内」という原則から外れている点です。

税務調査では、慶弔見舞金規程の有無や過去の支給実績などが確認されます。

もし規程があるにもかかわらず、規程外の特別扱いで高額な支給をしていれば、その部分が給与と認定されることもあります。

課税を避けるための対策

意図しない課税を避けるためには、以下の対策が有効です。

  1. 慶弔見舞金規程を整備し、それに従って運用する。
  2. 支給金額は、同業他社や世間一般の相場を参考に、常識的な範囲内に設定する。
  3. 全ての従業員に規程を周知し、公平に適用する。

従業員を思う気持ちから高額なお祝いを渡したいと考えることもあるかもしれませんが、それが結果的に従業員の税負担を増やしてしまうのでは意味がありません。

ルールに則った適切な運用を心がけることが、会社と従業員の双方を守ることに繋がります。

会社として守るべき贈る際のマナー

従業員に新築祝いを贈ることは、単なる金品の受け渡しではありません。

会社の文化や従業員への配慮を示す重要なコミュニケーションの機会です。

経理処理や法的な側面だけでなく、会社として守るべきマナーや姿勢があります。

これらを遵守することで、お祝いがより意義深いものとなり、従業員エンゲージメントの向上にも繋がります。

まず、最も重要なことは「公平性」と「透明性」を確保することです。

そのための土台となるのが、やはり「慶弔見舞金規程」の整備と周知です。

規程を作成する際は、新築祝いの支給対象者(例:勤続1年以上の正社員)、支給金額(例:一律3万円、役職に応じて変動など)、申請手続き(例:住民票の写しなど証明書類の提出)を明確に定めます。

そして、作成した規程は、社内ポータルや入社時の説明などで全従業員に公開し、誰もが内容を把握できるようにしておくことが不可欠です。

これにより、「知っている人だけが得をする」といった不公平感をなくし、制度への信頼性を高めることができます。

贈るタイミングと伝え方への配慮

マナーは、制度面だけではありません。

実際にお祝いを渡す際のタイミングや伝え方にも、細やかな配慮が求められます。

【贈るタイミング】

新築祝いを贈る最適なタイミングは、新居が完成し、従業員が引っ越しを終えて少し落ち着いた頃です。

具体的には、入居後2週間から1ヶ月以内が目安とされています。

引っ越し直後は片付けなどで忙しく、また早すぎると新居がまだ完成していない可能性もあります。

逆に、遅すぎるとお祝いの気持ちが薄れてしまうかもしれません。

従業員の状況をそれとなく確認し、適切なタイミングを見計らって渡すのがスマートです。

【伝え方】

お祝いを渡す際には、祝福の言葉を添えることが何よりも大切です。

朝礼やミーティングの場などで、他の従業員の前で渡すことで、会社全体でお祝いしている雰囲気を醸成することもできます。

「〇〇さん、この度はご新築おめでとうございます。ささやかですが、会社からのお祝いです。新しいお家での生活が素晴らしいものになるよう、心から願っています」といった温かい言葉をかけましょう。

また、その際に「これは会社の福利厚生制度からのお祝いなので、お返しなどの心配はしないでくださいね」と一言添える配慮も忘れてはなりません。

こうした一連のマナーを守ることで、会社は単なる雇用主ではなく、従業員の人生に寄り添うパートナーであるという姿勢を示すことができます。

素敵な従業員に新築祝いを贈る総まとめ

ここまで、従業員に新築祝いを贈る際の相場からマナー、そして経理処理に至るまで、多岐にわたるポイントを解説してきました。

多くのルールや注意点があり、少し複雑に感じられたかもしれません。

しかし、これらの知識は、大切な従業員への祝福の気持ちを、最も適切で、かつ喜ばれる形で伝えるために不可欠なものです。

最後に、この記事の要点を改めて整理し、素敵な従業員に新築祝いを贈るための総まとめとします。

従業員に新築祝いを贈るという行為の根底にあるべきなのは、日頃の感謝と、従業員の新しい門出を祝う真摯な気持ちです。

その気持ちを正しく伝えるためのツールとして、相場やマナー、そして法的な知識が存在します。

例えば、適切な相場を把握することは、相手に余計な気遣いをさせないための配慮です。

のしのマナーを守ることは、相手への敬意の表れです。

そして、福利厚生費として適切に処理することは、会社と従業員双方の利益を守るための知恵と言えるでしょう。

特に重要なのは、「慶弔見舞金規程」を整備し、公平かつ透明性のある運用を徹底することです。

これにより、属人的な判断を排し、すべての従業員が納得できる形でお祝いを贈ることができます。

これは、健全な組織運営の基盤ともなり、従業員の会社に対する信頼感を醸成する上で大きな役割を果たします。

お祝いは、義務で行うものではありません。

しかし、会社として制度を整え、心のこもった対応をすることで、従業員のモチベーションを高め、組織全体の活性化に繋がるポジティブな効果が期待できます。

この記事で得た知識を最大限に活用し、あなたの会社と従業員の素晴らしい関係を築く一助となれば幸いです。

従業員の幸せを願い、心からの祝福を届けてください。

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本日のまとめ

  • 従業員への新築祝い相場は1万円から3万円が一般的
  • 役職や勤続年数で金額に差を設ける場合は社内規程が必要
  • 現金を贈る際は新札を用意しご祝儀袋に入れるのがマナー
  • プレゼントはカタログギフトや商品券が失敗なく喜ばれる
  • 火事を連想させる赤い物やライターなどは避けるべき
  • のしは「紅白の蝶結び」の水引を選び表書きは「御新築御祝」
  • 名入れは会社名と代表者名を正式名称で記載する
  • 福利厚生として贈る場合従業員からのお返しは不要と伝える
  • 経費計上する際の勘定科目は主に「福利厚生費」か「接待交際費」
  • 福利厚生費にするには全従業員が対象で金額が妥当である必要がある
  • 福利厚生費なら会社は損金算入でき従業員は非課税になる
  • 金額が高額すぎる場合や対象者が限定的な場合は給与課税される
  • 意図せぬ課税を避けるため慶弔見舞金規程の整備が最重要
  • 贈るタイミングは入居後2週間から1ヶ月以内がベスト
  • 祝福の言葉を添え従業員の新しい門出を心から祝う気持ちが大切
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参考サイト
新築祝いを従業員に贈る時の金額の相場と胡蝶蘭の選び方ガイド
従業員さんへの新築祝いは、あげると給与として課税されるのでしょうか? – ひまわり
お祝い金を経理処理するのに使う勘定科目は? | HUPRO MAGAZINE
お祝い金(ご祝儀)の勘定科目は? 仕訳例や注意点も解説 – Freee
ご祝儀は会社の経費にできる?慶弔費の勘定科目を解説 – ジンジャー

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